王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「……やっぱりロニーって素敵だわ……」
中庭に残されたリリアンは、彼の後姿を眺めながらうっとりと呟く。七年ぶりだというのに、少女の頃の憧れがたちまち蘇って胸が熱くなった。
「宰相様があんなに笑ったの、初めて見ました」
背後からそう呟いた声が聞こえて、ファニーが後ろに控えていたことを思い出す。
「そうなの?」とリリアンが尋ねれば、ファニーはコクリと頷き潜めた声で言った。
「宰相様は厳しいことで有名なお方ですから」
それを聞いたリリアンは、随分意外な評判だと内心驚いた。モーガン邸にいた頃、ロニーは真面目だが穏やかな性格で、怒っている姿など一度も見たことがなかったのに。
けれど、田舎屋敷の侍従と王宮の宰相ではきっと事情が違うのだろう。立場上、臣下らに厳しく接しないといけないこともあるに違いない。リリアンはそう考えて納得した。
「今度はもっとゆっくりお話がしたいわ」
弾んだ足取りで中庭から去ろうとするリリアンを、王宮の窓から眺めているものがあった。
「リリーってば……また僕を妬かせるんだ?」
執務室の窓から中庭を見下ろすギルバートの瞳は、冷ややかな光を宿している。
「きみがそのつもりなら、もう遠慮しないよ? 今度は泣いても嫌がっても、やめてあげないから」
聞こえるはずのない窓の外のリリアンに話しかける彼の青い瞳には、抑え切れない嗜虐的な欲望が浮かんでいた。