王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「な……なんで私がギルの近侍なのよ!?」
リリアンは食事の席ということも忘れて、思わず椅子から立ち上がってしまった。その途端、斜め向かいの席から「リリアン様、はしたないっ!」とドーラ夫人の叱責が飛んでくる。
慌てて椅子に座りなおすものの、リリアンは隣の席のギルバートをギロリと睨んだままだ。それなのにギルバートはおろか、共にテーブルについているジェフリーまでも平然としているではないか。リリアンにはまったくもってこの事態が理解出来ない。
本日の晩餐のテーブルには、ギルバートとリリアン、それにジェフリーとドーラも同席した。臣下なので同じテーブルにはついていないが、ロニーとセドリックもそばに控えている。何やらリリアンに話があるということで、この面子が集まったようだ。
しかし、ワイングラスを傾けながらギルバートが伝えた内容は、残念ながらリリアンにとって喜ばしいものではなかった。
「近侍だなんて、そんな。僕はリリーを臣下にするつもりはないよ。きみは大切な存在だからね。ただ、僕の身の回りの世話をして欲しいだけなんだ。食事、着替え、起床、就寝……とかね」
「だからそれが近侍なんじゃない! 男の主君には男の従僕がつくのが普通でしょ、どうして私がギルのお世話をしなくちゃいけないのよ!」
「やだなあ、リリー。僕だってきみ専属の侍従だったじゃないか。堅いこと言いっこなしだよ」
「あれは子供の遊びみたいなものでしょ!」
ギルバートの言うことはいちいち滅茶苦茶だ。どんなに正論で言い返しても、のらりくらりと交わされてしまう。
どう考えてもおかしい要求なのに、祖父のジェフリーも厳格なドーラも優しいロニーも何も言ってくれないのがまた奇妙だった。リリアンはまたひとりだけ謀られてる気がする。