王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
しかし。ただペンを取って手渡すだけの仕事など、退屈極まりない。
始まって十分もたたないうちに、リリアンは欠伸を噛み殺すことに集中することになってしまった。
机の前に立ちぼんやりと、書類の確認をしているギルバートを眺める。考えてみれば政務中の彼の姿を見るのは初めてだ。椅子の肘掛けに頬杖をつき書類に目を通す姿は、なかなかさまになっている。いつもと違って伏し目がちな瞳が、なんだか大人っぽい。
こうしていると、やはり彼の方が年上なのだななどとリリアンが考えていると。
「リリー」
書類に視線を落としたまま、ギルバートが手を差し出してきた。
ようやく自分の出番がやってきたと、リリアンは少し嬉しく思いながら机上のペンを取った。こんな馬鹿らしい仕事でも、ただ突っ立っているよりはずっといい。
そして意気揚々とギルバートの手にペンを渡そうとしたとき。
「え?」
彼の手が、差し出してきたリリアンの手を掴んだ。
受け取らなかったペンは机から床に落ち、そのままコロコロと転がっていく。
「え? あの……ギル?」
ギルバートの大きな手はリリアンの手をしっかり握りしめている。やがてしなやかだけど少し骨ばった指が動きだし、リリアンの手の平や甲を撫で始めた。