王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「可愛いね、リリー。指舐められただけで、そんな声が出ちゃうんだ?」
意地悪なギルバートの台詞に、頬が一気に熱くなった。
また彼の度を越えた悪戯が始まったと思い、リリアンは叱責しようとしたけれど。
「感じやすい身体、もし僕以外の男がふれたらと思うと嫉妬で頭がおかしくなりそうだよ。絞首台送りにしても気が済まないだろうね」
明るい口調で身の毛のよだつことをギルバートは口にした。冗談のはずなのにどこか有無を言わせないその迫力に、リリアンは密かに身体をビクリと竦ませる。
「リリーの身体に愛撫していいのは、世界中で僕だけなんだよ」
そう言い切って、ギルバートはリリアンのかぼそい小指に歯を立てる。軽くだったので痛くはないが、少しだけ痕がついた。
「何……言ってるの? 私、あ……愛撫なんて、そんなことされたことない……」
疼きがせり上がってくるようなくすぐったさに、甘い吐息が零れないよう必死に我慢しながら問い掛けた。
ギルバートはチュッと薬指の付け根を吸い上げてから手を解放すると、刹那ふっと皮肉めいた笑みを浮かべる。
「敬意を表すキスでも、きみが色めいた表情を浮かべればそれは愛撫だ」
通常、敬意のキスといったら手の甲に受けるものだ。その言葉を聞いて、リリアンの脳裏に記憶がよぎる。中庭でロニーから二回受けた手の甲のキスを。
まさかと思い、そっと横目でロニーを窺い見る。けれど彼はやはり何も言わず、引きしめた表情さえも崩していなかった。