王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です


それからも、ギルバートは手伝いや身の回りの世話と称しては、リリアンに過剰に甘えてきた。

「着替えさせて、リリー」「ご飯食べさせて」、それぐらいはまだ許せた範囲だ。いや、冷静になって考えれば十九歳の国王に服を着せたり、食事を口に運んであげることはおかしいのだけど。

それでもまだ耐えられると思っていたリリアンだけど、彼がついに「湯浴みの手伝いして」と言ってきたときには、さすがに苦々しい表情を浮かべてしまった。

「それだけは嫌! いくらギルが王様だからって、未婚女の私に男性の洗身を手伝わせるのはありえないわ」

浴室に呼ばれたリリアンは、ほかほかと湯気の立ち上るバスタブの前で頑なに拒絶する。ギルバートが渡して来ようとする洗身用の布を、絶対に受け取らない気概だ。

ただでさえ湯浴みには彼との恥ずかしい思い出があるのだ。ギルバートが第二次成長期の少年と知らず、全裸同士でバスタブに入って洗い合っていた思い出が。これ以上赤っ恥の上塗りをするなど、まっぴらである。

しかし、当然簡単に引くギルバートではない。

「いいじゃない、僕とリリーの仲だもの。昔は何度も一緒に入ったよね。リリーが僕に湯浴みの手伝いを命令してさ、結局僕も脱がされて一緒に入っちゃうってパターンで。あの頃はリリーの方が強引に僕の服を脱がしてたんだよね。あはは、懐かしいなあ」

まるでリリアンの羞恥心に追い打ちをかけるようにギルバートはケラケラと楽しそうに笑う。リリアンの顔は、熟れた林檎よりもまっかっかだ。

たしかに子供の頃のリリアンはお姉さんぶりたくて、ギルバートをやたらと世話したがった。恥ずかしがる彼を強引に湯船に引き込み、ふわふわの髪をお気に入りの石鹸で洗ってあげたことは、今でもよく覚えている。

けれど、あれはギルバートを小さな子供だと思い込んでたからしたことであって、彼の服を剥いだ痴女みたいな言い方はやめて欲しい。
< 58 / 167 >

この作品をシェア

pagetop