王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

「それとこれとは話が別でしょう! とにかく! 私は絶対に手伝わないからね!」

今回ばかりは折れないぞと決意を籠めて、リリアンはきっぱりと拒絶する。そうして、浴室から出ていこうとしたときだった。

「きゃ……!?」

突然後ろから身体を抱きかかえられたと思ったら、リリアンはなんと服のままバスタブの中へ落とされてしまった。ザブンと大きな音をたてて、服ごと肩まで浸かってしまう。

「あはははは! リリー、目まん丸」

可笑しそうに笑ってギルバートはブーツを脱ぎ捨てると、なんと自分も服のままバスタブへ飛び込んできた。

普通のものよりかなり大きなバスタブだが、ふたり分の身体が浸かれば湯は溢れてしまう。ギルバートが勢いよく身を沈めると、ジャブンッと音をたてて湯が溢れ出した。

「な……何やってるのよ、ギル!!」

「何って、リリーだって僕が嫌がってたらよくこうやって服ごとバスタブに引っ張り込んだじゃないか。あの頃のお返しだよ」

だからといって、大人が同じことをするべきではない。あの頃ギルバートが着ていたのは丈夫な綿で出来たお仕着せの服だ。いくら濡らしたって絞って乾かせば済むものだった。今ギルバートが着ているアンカットベルベットのジュストコールも、リリアンのシルクタフタのドレスも、こんな乱暴な扱いをしたら台無しになってしまう。

けれど彼はまったく意に介していない。

「やっとリリーと一緒に入れた」

リリアンと向かい合う形でバスタブに入ったギルバートは、濡れた髪を頬に貼り付かせながら無邪気に笑って、手を伸ばしてきた。
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