王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
意味が分からず目をパチパチさせるリリアンに、ギルバートはあどけない笑顔をにっこり浮かべて、寝起きの紅茶と顔を拭く布と水差しの乗ったワゴンを押して入って来た。
「あなた……誰?」
「ギルバートです。今日からここで働かせてもらうことになりました」
なんの冗談だろうと思った。リリアンに向かって洗顔の布を差し出してくる少年は、自分よりも幼く見える。背も小さいし、まだ八歳ぐらいだろうか。本当に子供だ。
いくらなんでも、こんな幼い子に従僕の仕事が務まる訳がない。ましてや幾ら小さくたって彼は男だ。女である自分の身の回りの世話をさせるのも嫌だった。
しかし。
「ギルバートは知人の子なんだ。しばらく預かることになってな。家族だと思って仲良くしてやってくれ」
リリアンの訴えを、祖父は呑気な笑顔で交わした。
どうやら昨夜やって来たのは彼らのようで、屋敷には他にもロニーという青年の従僕が増えていた。ギルバートと兄弟なのかと思ったけど、どうやら違うらしい。
なんだか得体の知れない少年が近くにいることに最初は抵抗のあったリリアンだけど、それはすぐさま払拭された。
素直であどけないギルバートの存在は、リリアンの退屈だった日常を一変させたからだ。