王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
けれど、彼は顔を離してはくれたものの胸から手を離す様子はない。
「なんで嫌がるの。濡れた服を脱がせてあげるだけだよ」
「嫌! 脱がされるのもさわられるのも嫌ぁっ!」
リリアンの絶叫にも近い拒絶を聞いて、ギルバートの表情が変わった。あきらかに不機嫌そうな雰囲気を浮かべる。しかもそれは、今までのような可愛く拗ねるものと違って、年相応の男らしい苛立ちを窺わせるものだった。
「リリー、僕のこと嫌いなの?」
なんて馬鹿馬鹿しい質問だろうかと耳を疑う。こんな嫌われて当たり前のことをしておきながら、よくもぬけぬけとそんなことが聞けたものだ。
「……嫌い! 変なことばっかりして、ギルなんて嫌いよ!」
なんだか悲しくなってしまって、リリアンは思わず叫んでしまった。
今までは心開ける幼なじみに甘えたいのだろうと思って過剰なスキンシップも許容してきたが、さすがにこれは違う。ギルバートは明らかにリリアンを性の対象にしたのだ。
いくら幼なじみとはいえ、それはあまりにも見下されていると思った。このまま彼の欲望のはけ口になってしまったら、リリアンはまともに嫁げない身になってしまう。
教会は婚前の性交渉を禁止している。純潔を失ったりしたらふしだらの烙印を押され、リリアンをもらってくれる結婚相手などいなくなってしまうだろう。
それなのにギルバートは、リリアンがそんな不幸な目に遭うのも構わず性欲を満たそうとしているのだ。彼にとっては幼馴染の人生よりも刹那の快楽の方が大事なのだと思うと、悲しくて悔しくて涙が込み上がってきてしまった。