王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
リリアンは王宮を出ていこうと決意した。
屋敷が修復中だというのなら馬小屋で寝たって構わない。王宮にいるよりずっとマシだと思った。
これ以上ここにいたら、リリアンはいつかギルバートの戯れの末に純潔を奪われかねない。それだけは耐えられなかった。
穢れた身体にされるのも困るが、それ以上に穢されたくないものは思い出だ。幼い頃にギルバートと過ごした月日は、リリアンにとって生涯の宝物である。無垢で純粋で楽しかった思い出を、台無しにしたくない。大好きだったギルバートを、嫌いになりたくなかった。
リリアンは日の出前に目を覚ますと、ギルバートが起こしに部屋へやって来る前に急いでここを出ていく支度を始めた。とはいっても、身の回りの物はほとんど彼が揃えてくれたものだ。リリアンの荷物は小さな鞄にひとつもない。
わずかな荷物を鞄に詰め、ジェフリー宛に書置きを残す。先に屋敷に帰ってると。それから、ファニーの手を借りずひとりでデイドレスに着替えようとしているときだった。
「よ、いしょっと……」
ひとりではコルセットの紐が強く絞められず四苦八苦していると、ふと後ろから手が伸びてきた。
「大変そうだね、手伝ってあげようか?」
「うん、お願い。……って、ギル!?」
いつの間にか部屋に入ってきていたギルバートが、リリアンを後ろから抱きすくめながらコルセットの紐をキュッと締めあげた。