王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「でも出ていくのは駄目。それだけは許してあげられない。きみが望むなら何万着のドレスでも新しい離宮でもなんでも用意してあげるけど、僕から離れることだけは許さないよ」
その言葉を聞いて、リリアンは不満を思い切り顔に出してしまう。
そこまでしてギルバートは自分のことをおもちゃにしたいのかと、心がますます傷ついた。もしかしたら昨日リリアンを弄べなかったので、彼は意地になってるのかもしれない。
「もういいでしょう? ギルはこの数日間で私を散々からかったじゃない。もうたくさんよ。私を屋敷に帰して」
「駄目だ。それにきみの屋敷は今修復の工事中で入れないぞ」
「それでもいい。馬小屋で寝るから」
「だったら僕も王宮を出てきみと一緒に行く。一緒に馬小屋に寝泊まりする」
なぜそこまで執着してくるのか、リリアンには分からなかった。まるで子供の駄々だけど、ギルバートの顔は真剣だ。濃青の瞳でまっすぐにリリアンを見つめてくる。
いつの間にかリリアンよりずっと高くなってしまった目線は、無邪気さの代わりに雄々しさを増した気がする。大人の覚悟を持った、真剣みを感じる。
きっと彼は本気だ。リリアンが王宮を出ていったらどこまでも追いかけてくるつもりだろう。そんなことをしたら、宮廷中、いや、国中の人が困ってしまうというのに。
「……ギルの馬鹿。王様なのにそんなことしたら駄目じゃない」
今度はリリアンの方が呆れの溜息を零した。すると、途端にギルバートは子供のように拗ねてしまう。
「だってリリーが意地悪言うから」
いじけたときの口調は、子供の頃とまったく変わっていない。大人になって国王にもなったというのに困った人だなあと思うと共に、リリアンは安心もしてしまう。ああ、やっぱり私の大好きなギルバートだ、と。
「もう、仕方ないんだから。でも約束して。……もう絶対、昨日みたいなことはしないって」