王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「国王陛下はリリアン様のことを信頼しておられるんですねえ」
そんなことを口にしながら、ファニーはリリアンの着替えを手伝った。
あれからギルバートから指示があって、リリアンは乗馬用のルダンゴドのドレスを着るように言われた。もちろん、足元もハイヒールではなく乗馬用ブーツにするようにと。
「幼馴染だからよ。特別信頼されてる訳じゃないと思うわ」
着替えが終わると、リリアンは今度はドレッサーの前でファニーに髪を編み込んでまとめてもらう。
「そうでしょうか? だって国王陛下が宰相様以外の方と馬で遠乗りされるなんて初めてですよ」
鏡の中の乗馬スタイルの自分を見ながら、リリアンは心の中で(そうだったんだ)と呟いた。
「私は屋敷にいたときよく馬に乗っていたからじゃない? きっと乗馬相手にちょうどいいと思ったのよ」
モーガン邸の領地は広い農地がほとんどだ。移動に馬は必須なのでリリアンも乗馬の腕はそれなりに身につけている。だからといって、国王の乗馬相手になりうるほどの腕前かと問われたら違う気もするが。
今朝のこともあって、ギルバートはリリアンに甘える手段を変えたのだろう。性欲のはけ口としての対象から、遊び相手に変更したのかも知れない。けれど、ファニーにそんなことを言えるはずもなかった。
適当な理由で会話を濁すと、ファニーは手際よくリリアンの髪をまとめながら冗談めかした声で笑った。
「国王陛下はリリアン様をたいへん気に入られているから、もしかしたら王妃に迎えたいんじゃないかって噂もあるぐらいなんですよ」
「ま、まさかぁ!」
予想外の話をされて、リリアンは思わず素っ頓狂な声を出してしまった。