王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
さすがに、おしのびで行ったのはまずかったのだろう。
王宮へ戻ると大臣や衛兵たちが青い顔で右往左往していた。
「へ、へ、陛下! 護衛もつけずどこへ行かれてたのですか!?」
「御身にもしものことがあったらどうされるつもりですか! 少しはお立場というものをお考えください!」
ギルバートが馬で城門に入るなりドタバタと駆け寄ってきた大臣たちが、口々に責めたてる。しかし彼は聞く耳も持たず、どこか白けたような顔で冷たく返す。
「騒ぐな。少し出かけると手紙を残したはずだ。それに護衛などつけなくても、自分の身ぐらい自分で守れる。今までそうやって生きてきたんだからな」
突き放すような口調のギルバートに、大臣達は顔をしかめたまま皆黙ってしまった。
それを見てリリアンは内心驚いた。優しいはずのギルバートが、臣下をこんなに冷たくあしらうなんて、と。さっきまでのギルバートと大違いだ。
大臣達は心配してくれているのだから、いくら国王と言えどそんな態度はいけない。リリアンがそう窘めようとしたときだった。
少し離れた場所からロニーがじっとこちらを見ていることに気づいた。
以前、執務室で見たときと同じ異様なほど何の表情も浮かべていない顔だ。リリアンはなんだか背中に嫌な緊張を走らせる。
「じゃあね、リリー。またあとで」
ロニーに気を取られていると、ギルバートはそう言い残して馬から降り大臣達に囲まれて王宮へと戻っていった。
「あ、うん……。またね」
ギルバートにそう返事し再び振り返って見ると、もうそこにロニーの姿はなかった。