王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です


部屋に戻って着替えを済ませたリリアンの元に訪れたのは、ドーラ夫人だった。

ここ数日は顔を合わせていなかったのでなんだろうと思っていると、ドーラはリリアンをソファーに座らせ、相変わらずの厳めしい表情でお説教を始めた。

「男性というものは基本的に刺激を好むものです。そして、それを窘めてさしあげるのが女性の仕事。いくら陛下に誘われたからと言って、護衛もつけず出かけるなどもっての他です。あなたが陛下をお止めにならないでどうするんですか」

「はあ……」

まさか、ギルバートのことで叱責されるとは思わず、リリアンはなんとなく腑に落ちない。

たしかに彼の立場を考えれば止めるべきだったのだろう。けれど、幼なじみとして忠告することは出来ても、彼は国王だ。命令し制御する権限などリリアンにはない。

そもそもリリアンがずっとギルバートに振り回されっ放しなのは、見ていて分かるはずだ。どんなに抗ったところで、彼の強引でしたたかな甘え方を前にしては、リリアンは為す術もないというのに。

「ごめんなさい、次からは気をつけます……」

謝罪を口にしたものの、リリアンは不満を覚える。なぜドーラ夫人は自分にこんなにも理不尽に厳しいのだろうという疑問が、再び湧き出た。

(ドーラ夫人はきっと田舎娘の私のことが嫌いなんだわ)

そうとしか思えなかった。会うなり叱責され、王宮に来るまでの旅路でもケチをつけるように作法から動作まで細かく注意され、あげくのはてには国王をもっとコントロールしろなどと無茶を言う。これが嫌がらせ以外のなんだというのか。

公爵夫人という高い身分を持ち、洗練された王宮で女官長を務めるドーラ夫人から見れば、リリアンはさぞかし野暮ったく見えて鼻につくのだろう。そんな女が主君と懇意なのも気に入らないのかもしれない。

せっかくギルバートが想いを告げてくれたというのに、リリアンは堅苦しいドーラ夫人の監視から逃げて早くモーガン邸へ帰りたくなってしまったのだった。

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