王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
 

ギルバートとロニーが屋敷にやって来てから半年が経った。

ふたりが加わった生活にモーガン邸はすっかり馴染んだけれど、何やら最近はリリアンのようすがおかしい。

「ねえ、ギル。どっちのリボンが可愛いと思う?」

「……どっちでもいい」

ドレッサーの前に紫と薄緑のリボンを並べて眺めているリリアンは、ギルバートがふてくされた顔をしているのにも構わずご機嫌だ。

最近のリリアンはずっとこうである。一日の大半を、どうやって自分を可愛く飾るか悩んでばかりだ。ギルバートはそれがとっても面白くない。それというのも。

「うーん、やっぱり紫にしようかな。だってこっちの方が大人っぽいでしょ? きっとロニーはこっちの方が好きよ」

どうやらリリアンはロニーに恋をしてしまったらしい。
十歳の小さなレディは自分より十八も年上の青年従僕にどうやって振り向いてもらうか、そればかりを考えている。

ロニーは背の高いスマートな青年だ。黒髪を後ろできっちり括り、いつだって礼儀正しい。切れ長の瞳が最初は少し怖いと思っていたけれど、慣れてくるとリリアンは、子供の自分を一人前のレディ扱いしてくれるロニーにすっかり憧れてしまっていた。

恋を知りたがる年頃の少女が、洗練された大人の男に心惹かれるのも無理はない話である。

リリアンは柔らかな栗色の髪をいつものおさげではなく、大人の真似をしたアップスタイルにまとめ、さっき選んだ紫のリボンを飾った。

「でーきた、っと。でもこの髪型だとやっぱりドレスが子供っぽく見えるわね」

鏡の中の自分を見つめながら、リリアンは不満そうに小首を傾げる。そしてギルバートの方に振り向くと、デイドレスの胸元のボタンを外しながら言った。

「ねえギル、知ってる? 夜会で女の人はこんな風に胸の開いたドレスを着るんですって。あーあ、私も早くそんなドレスを着たいなあ」

なんとか大人びた魅力を出そうとリリアンは四苦八苦しているが、それを見たギルバートの顔色がサッと変わった。
< 8 / 167 >

この作品をシェア

pagetop