王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「分かった、約束だよ。僕、頑張ってくるから。だから絶対、一緒に蜂蜜入りのミルクを飲もうね」
屈託ない笑顔になったギルバートを、リリアンは本当に可愛いと思う。眉目秀麗の青年だというのに、甘えた子犬のようだ。
「ふふ、甘いミルクでそんなに喜ぶなんて。ギルったら子供みたい」
思わず肩を揺らし笑いを零せば、ギルバートはそれを見て目を細め呟いた。
「そのあとは昔みたいに一緒に寝て、一緒に気持ちいい夢が見られたら、もっと嬉しいんだけどなあ」
「え? なに?」
「なんでもなーい」
一瞬、青い瞳に妖しい色が浮かんだ気がしたけれど、彼はすぐに視線を伏せスープを飲み出したので、リリアンは気にしないことにした。
どうやら、今日は近隣国からの外交官らが新たに国王になったギルバートへ謁見に訪れているようだ。晩餐会も大掛かりなものようで、晩餐後の舞踏会には上級貴族も招かれているらしい。
王宮内はいつにも増して賑々しく、ギルバートも多忙なのだろう、リリアンの前に姿を全く現さなかった。
「すごいわね、馬車がさっきからひっきりなしに門内に入ってくるわ。ギル、大丈夫かしら」
自室の窓から外を眺め、リリアンが呟く。水路を渡ってすぐに構えられているオアーブル王宮の正門は巨大で、衛兵が何人もついている。今日はさらに人数も多く、続々とやって来る馬車に門も開きっぱなしだ。
これだけの、しかも異国の客を相手にするのはさぞかし大変だろうと思う。国王としてのギルバートをみくびっている訳ではないが、あの甘えん坊が他国の百戦錬磨の外交官を相手に、上手く渡り合えるのか少し心配になってしまった。
しかし、リリアンのそばに控えていたファニーは意外な意見を述べた。
「そうですねえ、国王陛下は厳しいお方ですから。会談であまり圧力をかけ過ぎないと良いのですけど」