王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「な、何してるの! リリー!」
おっとりした彼らしくない剣幕に、リリアンもさすがに驚いてしまう。
「何って……、胸元を開けたら少しは大人っぽく見えるかなーって」
「駄目だよ、はしたない! レディは男にみだりに胸を見せるものじゃないよ!」
年下で頼りないと思っていた少年に叱責されて、リリアンは少しむっとしてしまう。
「何よ、ギルったら急に変なの。それに私の胸を見たギルがそんなこと言う資格ないわ」
思わぬ反論を受けて、ギルバートは返答に詰まった。
今や姉弟のように仲良くなったふたりは、時々いっしょに水浴びや湯浴みをしている。最初は泥遊びで汚れた脚を洗っていただけだったけど、ふざけているうちにふたりしてびしょ濡れになってしまい、結局一緒に裸になってしまったのだ。
以来、リリアンはギルバートに洗身の手伝いをさせると称して時々一緒に湯浴みをしている。侍女たちは何か言いたげだったが、結局特に口を挟むことはしなかった。子供同士だと思って大目に見てくれていたのだろう。
そんなリリアンの一糸纏わぬ姿を知っているギルバートが、男に胸を見せるななどと、どの口で言えようか。しかし。
「僕はいいんだ、特別だから。でも他の男には絶対に見せちゃ駄目」
彼は開き直ったように強い口調で言うと、リリアンの開いた胸元のボタンを閉じ直した。
「変なの。ギルのけち」
なんだか納得がいかなかったけれど、気弱なギルバートが珍しく強く注意してきたことに気圧されて、リリアンは仕方なく言うことを聞いた。