王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
リリアンは自分から腕を伸ばし、彼の頭を抱き寄せた。挨拶のハグ以外はしないという約束だったけれど、彼を抱きしめずにはいられなかった。
素直に抱き寄せられたギルバートも腕を回し、リリアンの身体をぎゅっと抱きしめる。逞しい腕の感触に、リリアンの胸が甘く高鳴った。
「リリー……、愛してる。きみがいたから、僕は今日まで生きてこられたんだ」
切なげに紡ぐその言葉が、きっと誇張ではないことがリリアンには痛い。彼の生い立ちや環境を考えれば、本当に心開き安らげる存在は彼女だけだったのだろうから。
「大丈夫よ、ギル。もう何も怖がらなくていいの。私がついてるから」
ギルバートは言葉もないまま肩口に顔を伏せ、ただ強くその肢体を抱きしめ続け、リリアンも静かにそれを受けいれていた。
ふたりきりのバルコニーは音もなく、ただ夜空に浮かんだ星達が優しくふたりを見守っている。
やがて、ギルバートがそっと腕をほどいた。リリアンが見上げると、その顔は少しだけ照れたようにはにかんでいる。
「ありがとう。さっきまで心が腐りそうなほど苛立ってたけど、リリーのおかげで落ち着いた。やっぱりリリーはすごいなあ」
ほんのり頬を染めて笑うギルバートは、もう完全にいつもの彼だ。嬉しくなってリリアンもにっこりと微笑み返す。
「どういたしまして。じゃあ気持ちが落ち着いたところで、さっきのご令嬢に謝ってこなくちゃね」
「ええーっ?」