王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
ギルバートは思いっきり不満そうな声をあげたが、そこは甘やかさない。リリアンはぎゅっと彼の手を握り、しっかりと目を見つめて諌める。
「たしかにチエールの大公殿下はギルに失礼なことをしたと思うわ。でも、それはあのご令嬢の意思とは関係ないでしょう? 彼女、人前で辛辣な言葉を浴びせられてきっと傷ついてるわ。どんな理由があろうと、女の子を泣かせる男の子は悪者よ。ちゃんと謝ってらっしゃい」
まるで小さい子供を叱るように言われてしまって、ギルバートはふてくされた表情を浮かべたあと、つい噴き出してしまった。
「まったく……リリーには適わないや」
そう言って眉尻を下げて笑ったあと、前髪をざっくりと掻き上げる。
「仕方ない、きみがそう言うなら行ってくるよ。その代わり、約束のミルク。いつもより蜂蜜たっぷり淹れておいてね」
「うん、分かった。いってらっしゃい」
さっきよりもさっぱりとした表情で、ギルバートは廊下へ続く掃き出し窓を開けてバルコニーを出ていった。
金の肩章をつけた立派な濃青のコート姿は、後ろから見ても凛々しい。それはまごうことなき、国王としての威厳も誇っている。
リリアンはその後ろ姿を眺めてそっと願う。
どうか彼が、ありのままの笑顔で国王として生きていけますように、と。