王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
リリアンがバルコニーから戻り廊下を歩いていると、角を曲がってきた人影とぶつかりそうになった。
「きゃっ」
「……っ、と。失礼いたしました。お怪我は?」
聞き覚えのある声に顔を見上げてみれば、それは黒いジュストコール姿のロニーだった。
「なんだ、ロニーじゃない。びっくりした」
「……リリアン様?」
ロニーはリリアンの姿を見ると、明らかに意外そうな顔をする。その視線にリリアンは自分が舞踏用のドレス姿だったことを思い出した。
「本日の舞踏会に、リリアン様はご出席されないと伺っていましたが……」
「あ、あの。ええと、ちょっとね……」
ギルバートが心配で様子を見にきたと素直に言うのはさすがになんだか気まずい。リリアンが言葉を濁していると、一瞬、ロニーが眉をしかめた。
「もしかして、ギルバート陛下とご一緒におられたのですか?」
あまりにも直球で尋ねられ、リリアンは口籠ってしまう。すると、その様子を見たロニーがふっと表情を緩めて尋ね直した。
「ああ、失礼いたしました。陛下が会場からいなくなられたので、探しているところだったのです。もしや、リリアン様とご一緒だったのかと思いまして」
そう言われて、リリアンは主催者であるギルバートと舞踏会中なのに長話してしまったことを反省する。