王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

「そうだったの? ごめんなさい。確かにさっきまでギルと一緒にいたわ。でも今はもう会場に戻っているはずよ」

素直に謝罪したリリアンに、ロニーは「いえ、いいのですよ」と手を振って見せた。

「陛下の身に何かあった訳でなければかまいません。もう会場に戻られたのなら、すれ違いになってしまったようですね。私も会場に戻るとします」

「本当にごめんなさい。そうよね、ギルの姿が見えなくなったらみんな心配するに決まってるわよね」

ギルバートの胸の内を聞けたことは後悔していないが、少し周囲への配慮が足りなかったと、リリアンは申し訳なく思う。

もう一度頭を下げると、少しの間沈黙が落ちた。そして、ロニーが呟くように言う。

「……いえ、リリアン様が謝ることではございません。私が陛下のおそばを離れなければ良いだけのことですから」

けれど、言葉とは裏腹にその声はとても淡々としていたので、リリアンはそれがロニーの本心なのかは計りかねた。



折り目正しい一礼をしてその場を去って行くロニーを見て、リリアンはふと思う。側近である彼こそ、ギルバートのもっとも良き理解者なのでは、と。

たしかロニーは元々ギルバートの母である故ミレーヌ王妃に仕えていた近衛だ。ミレーヌが亡くなってからはずっと息子であるギルバートに仕えている。それこそ、生まれたときから。

普通に考えれば家族ほどの絆がふたりにはあるはずだろう。七年前に暗殺の窮地から救ってくれたのだってロニーなのだから、命の恩人といったって過言ではない。

(そうよね。ギルにはロニーっていう一番の味方がいるじゃない)

そう考えると少し安心した。孤独なギルバートに信頼出来る人がいることはとても大きい。

(私だって、お爺様だって、ロニーだって。それにセドリックやドーラ夫人だってきっとギルバートの味方よ)

明るい表情で前を向きながら、リリアンは廊下を歩き自室へと戻る。そして今夜は、甘いミルクを飲みながらギルバートとたくさんの話をしようと思った。

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