テトラポットの上、ふたりぼっち。
それが本当に見た夢なんだとしたら、洸は正夢を見ていることになる。
だって、私はもうすぐいなくなる。
この島から、いなくなる。
もう言ってしまおうか。
''あたしな、この夏が終わったらこの島からいなくなるねん''
'' 親の都合でここにおれんくなったんや ''
そう、言ってしまおうか。
……言えない。
言えるわけない。
辛くなる。
……辛くさせる。
『…も? ……もも?モモ?』
「……はっ!どうした?」
『どうしたはこっちのセリフや、ボーッとしすぎやで。』
「そんなことないで、多分」
『いーや、今日は絶対ボーッとしよるで、モモ。』
「そんなことないで? なんならいつもぼーっとしとるわ」
『……なんでそこに自虐ネタぶっ込んだん?』
じゃないと洸は納得しないでしょう?
そんなこと言えなくて、またひとつ洸に嘘をつく。
「なんとなくや、なんとなく、」
『へんなやつ。』
「ほんなこと洸が一番よく知っとるやん。」