テトラポットの上、ふたりぼっち。
「……あ…うん、」
「俺さ、自分の店開いたんだ。」
「あ、そうなんや……え!?」
髪を結って貰っているのも忘れ、感情の思うままに振り向いてしまった。
おかげで髪はグシャグシャ。
「あーあ、くずれた」
「ご、ごめん…」
「いーよいーよ、気にすんな。
今度は動くなよ」
「はーい」
そのままお兄ちゃんの美容室の話は終わった。
・
そのまた30分後。
ーーーピーンポーン
家のドアベルが鳴る。
「はーい」
私は勢いよくドアを開けた。
ーーー……家がダンボールだらけだということを忘れて。
「桃子、行けるか……っえ」
まず寧は私を見て固まった。
「なんやねん、別に着たくて着よるもんやないで、これ。めっちゃ暑いで」
「あ、そうなんや、あ、そうやな」
さっきから顔を真っ赤にした顔を隠すように腕で顔をおおってそっぽを向いている寧。
似合ってないのは知ってるけど酷くないか
怒ることはないじゃない。
「かわいい…」
ぼそっと小さな声ででも確かに''かわいい''と言ってくれた。
それが浴衣だと知っていても嬉しかった。