テトラポットの上、ふたりぼっち。
第一節 残り44日
「もーもこっ」
「わか!!」
海沿いの道をゆっくり歩く、ふたつの影。
私たちの歩く先に見える、大きな学校。
私たちだけではない。
私たちと同じ制服を着た男女が、ふざけあったり、おしゃべりしたり、走ったり。
思い思いに道を行く。
「桃子ちゃん、わかちゃん。
きぃつけて行きなねぇ」
「あぁ、パン屋さんのおばちゃん!おおきに!」
「ありがとう!」
少しなまりの入った私と、標準語を話すわか。
「おい、さる」
自転車のベルとともに聞こえた声。
私のことをさると呼ぶのは一人しかいないから、振り向かなくてもわかる。