テトラポットの上、ふたりぼっち。
「はい、桃子です…」
「ふ、すげぇ声。」
「洸…」
「よ、元気か」
「まぁそれなりに、やな」
「そか、ケータイ繋がらへんけど、解約したん?」
「してへんよ、あー、電源切れてるかも。」
「なんや、心配して損した。」
「ごめんな」
「いや、で、わかから伝言で、『灯台の下に14:00待ってる。』やって。」
「私なんかしたんかな。」
「……知らん。」
「えー、なにしたんやろ」
「しらーん。じゃあな」
ツーツーツー。
無機質な電子音が鳴る。
「なんやぁ〜…」
「あら、桃子。電話終わったの?
早く荷造りしてちょうだい。」
「終わってる…」
「そう?なら手伝って…「ちょっと出てくる」」
「ふふふ、行ってらっしゃい」
「なんや、わかと会ってくるだけやで。」
「そうなの、行ってらっしゃい」
こんなに頻繁に家を空ける娘がどこにいるのだろうか。
「お父さんは?」
「帰ってるわよ」
「ほうなんや」
「会って行く?」
「んー…大丈夫。」
「そっか。」
「うん。じゃあ支度したら行くから、荷造りお願いします。」
「はいさー」