テトラポットの上、ふたりぼっち。
41日
7月22日土曜日
「あと3日で夏休みだね!」
「せやなぁ。でも実行委員でほとんどつぶれる気ぃするわ」
「実行委員ねぇ…」
「まっ、なってしもうたからにはちゃんとやろー思っとるし!」
「そっか、頑張れ」
「おおきに!」
わかでさえも知らない。
私が、こんなにも海祭に熱くなっているか。
誰も知らない。
いい。誰も知らないままでいい。
わかも、寧も、洸も。
誰一人として、わたしの、秘密に気づかないままで。
***
7月30日
夏休みが始まって、本格的に作業が始まった。
「のうのう、桃子?」
「なんや、寧」
「ここ何色やったっけ?」
「オレンジやで」
「ほやほや、桃子に似とるなー思ったんや」
「なんや、それ」
「桃子は、夕日に染まった海みたいやでの」
「褒めとるん?それ」
「褒めとる褒めとる、最大級の誉め言葉や」
「あーほうですかっ!そりゃあどうも」
可愛くない言い方だったかな。
そう思って横でオレンジ色を丁寧に塗る君の珍しく真剣な横顔を盗み見る。
”桃子は、夕日に染まった海みたいやでの”
その言葉が頭から離れない。
私が夕日に染まった海だったら、君は…
君は…
太陽に照らされてキラキラしている海だね。
「おーい?さる。手が止まってるべ」
「っあ、ごめん」