花の色は 移りにけりな いたづらに



「…それで?」


「えっと…ですね、どうやら私を連れ戻す作戦にでているらしくて…」



二人のお気に入りのカフェ。
学生時代も、今も、秘密基地のようなそこを気に入っている。


「桜芳、あなたが軽率だったというのもあるけれど、御堂の御曹司があなたに影をつけていたのよ」

「影…?」


文学や歴史に精通している私には、それが地面に伸びるただの影ではないことくらい分かった。



「っ!そんな!まさか!!」



「いや、あの男なら絶対やるわ」



深桜はきれいな足を組み直してこちらに身を乗り出した。



「だって桜芳への執着、部外者の私が見てても恐ろしいもの」


「恐ろしい?」



私への執着…
教授よりも恐ろしいのかしら…



「ええ、私は幼なじみだからラッキーよ
こうして今でも一緒にいられるんですもの」


深桜は綺麗に嬉しそうに笑う。



「幼なじみの私たち以外で桜芳が自由に連絡取れる人っている?」


「深桜たち以外で…?」



そういえば、私は知らない。学生時代の友人たちの今を。
連絡先も、今何をしているのかも、仲のよかった子のことすら、


なにも知らない…




< 33 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop