花の色は 移りにけりな いたづらに
「…それで?」
「えっと…ですね、どうやら私を連れ戻す作戦にでているらしくて…」
二人のお気に入りのカフェ。
学生時代も、今も、秘密基地のようなそこを気に入っている。
「桜芳、あなたが軽率だったというのもあるけれど、御堂の御曹司があなたに影をつけていたのよ」
「影…?」
文学や歴史に精通している私には、それが地面に伸びるただの影ではないことくらい分かった。
「っ!そんな!まさか!!」
「いや、あの男なら絶対やるわ」
深桜はきれいな足を組み直してこちらに身を乗り出した。
「だって桜芳への執着、部外者の私が見てても恐ろしいもの」
「恐ろしい?」
私への執着…
教授よりも恐ろしいのかしら…
「ええ、私は幼なじみだからラッキーよ
こうして今でも一緒にいられるんですもの」
深桜は綺麗に嬉しそうに笑う。
「幼なじみの私たち以外で桜芳が自由に連絡取れる人っている?」
「深桜たち以外で…?」
そういえば、私は知らない。学生時代の友人たちの今を。
連絡先も、今何をしているのかも、仲のよかった子のことすら、
なにも知らない…