花の色は 移りにけりな いたづらに
『今日はお祝いゆえ、孫娘を連れてきたのだ
桜芳、泣きそうな顔していないででご挨拶しなさい』
『…つづき さほ です
いつもそふがおせわになっております』
さっきまでの泣きそうな顔ではなく、しゃんと背筋を伸ばし、指をついてお辞儀をする姿は将来の家元そのもの。
都築家は代々続く日本舞踊 洸歌流 宗家
源一郎は当代家元
桜芳はその孫娘。将来の家元だった。
『ねぇ、おじいさま、あのね、お花さんたちなんだかかなしそうなの…』
『ほう…
暁坊、今日のお客人は我らで最後のようだ
もし、不都合がなければ、桜芳と遊んでやってはくれないか?』
『え…』
『おお、おお、それがよい!暁臣、桜芳さんと庭で遊んできなさい』
じいさまがパンと手を叩いた。
『はい、行って参ります…
さほちゃん?こっちにおいで?』
『お兄ちゃん遊んでくれるの?』
大きな可愛らしい目でこちらを見る。
『うん、だからおいで?
お庭でお花つもう』
『はい!お花さんだいすきです!』