カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

 夏彦さんが使っていいと貸してくれた寝室に入る。


 電気を付けて、

「えー!!」

 わたしは叫んでいた。


 その声を聞きつけてやってきた夏彦さん。叫びの原因を理解したのか、なぜか頷く。



「使わないベッドやクローゼットを用意した」

「使わないって、どっちもピンク色ですけど!?」

「妹のものだ」



 夏彦さん、妹さんがいたの? 驚いた。


 それよりもまさか、家具を用意されるとは思わなかった。いつの間に部屋に入れたんだろう。



「ありがとうございます」



 妹さんにも感謝しなきゃ。ところで何歳離れてるんだろう。
 あ。そういえば……。



「夏彦さん。ずっと聞きそびれていたんですけど」

「ん?」

「夏彦さん、何歳なんですか?」

「三十八」

「え?」

「三十八」



 待って、待って!
 わたし、ずっと四十過ぎてると思ってた。


 まだ三十代! わたしと十歳違い!!

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