カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


 首を傾げる夏彦さん。
 すぐにマンション出るかもしれないのに、どうして買ってくれちゃってるの?



「柄、気に入らなかった?」



 いや、柄じゃない。買ったことにびっくりしてるんだってば!


 何やら不安そうな顔をしていたから、わたしは思いを断ち切ってお礼を言う。



「ありがとうございます」



 満足げに椅子に座ってくれた。わたしも夏彦さんの正面に座る。


 まだお風呂に入っていない夏彦さんはいつも通りで、やっぱり無表情で、何を考えているのかが読みづらい。


 でも、まだ何日かだけどちゃんといろんな感情を出してる。
 それがわかりづらいだけなんだよね。



「いただきます」



 目の前には夏彦さん特製生姜焼き定食。
 メインの生姜焼き。キャベツの千切り。味噌汁とごはん。


 よく見れば箸まで新品。これも買ってくれたんだと思ってまじまじと見つめてしまった。

< 103 / 167 >

この作品をシェア

pagetop