カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
首を傾げる夏彦さん。
すぐにマンション出るかもしれないのに、どうして買ってくれちゃってるの?
「柄、気に入らなかった?」
いや、柄じゃない。買ったことにびっくりしてるんだってば!
何やら不安そうな顔をしていたから、わたしは思いを断ち切ってお礼を言う。
「ありがとうございます」
満足げに椅子に座ってくれた。わたしも夏彦さんの正面に座る。
まだお風呂に入っていない夏彦さんはいつも通りで、やっぱり無表情で、何を考えているのかが読みづらい。
でも、まだ何日かだけどちゃんといろんな感情を出してる。
それがわかりづらいだけなんだよね。
「いただきます」
目の前には夏彦さん特製生姜焼き定食。
メインの生姜焼き。キャベツの千切り。味噌汁とごはん。
よく見れば箸まで新品。これも買ってくれたんだと思ってまじまじと見つめてしまった。