カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

「もしかして、今日聞いてた?」

「ふへ?」



 夏彦さんが突然言うから、肉をくわえたまま変な返事をしてしまった。


 聞いていたというのは、やっぱり瞬くんの社員にならないかという話のことかな。思わず聞いちゃったけど、やっぱりマズかったかな。


 わたしの表情を見たのか、何かを悟ったらしい夏彦さんが一瞬目を伏せる。



「今日で五十回」

「え?」

「五十回、振られている」



 告白みたいな言い方しないで。でも、夏彦さんもなかなかやる。五十回も挑戦したんだよね。



「わたしが聞いていい話なんですか?」

「そういう性格だってことは、知っていいと思う」

「そういうって?」

「何に対しても興味がない」



 そうか。だから、社員じゃなくてアルバイトでいいと思ってるんだ。資格や検定に興味がないのも、そういうこと?



「でも初めて会った時はそう見えませんでした。いきなり事務所に連れてこられたけど」

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