カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

 聞けば、瞬くんは毎日を適当に平和に過ごしたいらしい。


 普通に過ごして、食べて、寝て、一日が終わる。それだけで充分。趣味もなくて、ただ生きているだけ。


 そんな彼を雇った時から、夏彦さんは何かしら興味を持って欲しいと色々提案したと言う。


 でも駄目だった。


 そんな時にわたしがランチに来た。
 スイーツ関係を増やしたいと考えた矢先に、食べ物に詳しいわたしが来たことで強引に面接を受けさせた。


 厄介な誘いがなくなるんじゃないかと、わたしを利用するつもりだったらしい。自分のためだ。



「悪気はないんだ」

「わかってます。それで嫌ったりはしません」

「よかった」



 夏彦さんは麦茶を一口飲む。
 わたしもそれにならって、麦茶を飲んでから気になることを言ってみる。

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