カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
わたしがもっと出来るようになれば、夏彦さんが出てこなくて済む。まだまだわたしはお荷物だ。がんばらなきゃ!
「すみません」
そんなわたしに話しかける男性客。雑貨の品出しをやめて、すぐに立ち上がる。
「はい。何でしょう」
彼は困った顔をしている。雑貨を見渡しながら質問してきた。
「あなた、恋人はいますか?」
「え?」
「好きな人は?」
「え、え!?」
男性客は笑顔だけど真剣な目。何かを探るように見られて、わたしは質問に答えられなかった。
「好きな人、いるんですね」
「え……わたし、どうなんですか?」
意味のわからないことを言ってしまった。顔が熱い。
「ペアでアクセサリーが欲しくて、恋人にお勧めのペアものありませんか?」
「あ。さっきの質問……」
「ああ! すみません! 僕ってば何て質問をしたんでしょう。本当にデリカシーがなくて、よく彼女にも言われるんです。もう、怒らせてばかりで」