カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


 ***


 その日も仕事は午後三時まで。同じように不動産屋さんに足を運び、来月には新しい情報が出るからと言われてしまった。


 情報更新がすぐにわかるアプリがあると教えてもらい、すぐにインストールしようと思ったんだけど。
 スマホを店のロッカーに忘れたことに気づいて、わたしはまたはぴねすのドアを開ける。


 すでに午後五時を過ぎていた。


 事務所や更衣室には誰もいないらしく、みんなフロアにいるみたいだ。そういえば遅番のスタッフを知らない。


 挨拶、するべきなのかな。した方がいいよね。



「あれ? 麗さん?」



 目の前には今来たばかりらしい三条陽希くん。高校から直接来たのか、学生服のまま。
 笑顔が何とも癒される顔。若いって素晴らしい。



「なんか、久しぶり」

「はい! シフト違うからなかなか会えないですね。でも、いずれ遅番もやるんですよね?」

「その辺はまだ決まってないというか……夏彦さんに聞いてない」

< 114 / 167 >

この作品をシェア

pagetop