カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


 そういえば言われたままにやっていたけれど、ずっとこの時間ではないよね。わたしはどの時間帯にいくんだろう?



「そうなんですね。ところで、今日は?」

「あ。そうそう、スマホ忘れちゃって。ついでに遅番の方たちに挨拶していこうかと」

「今はやめた方がいいです」



 思いもよらない言葉に、わたしは立ち止まる。
 挨拶しない方がいい? なぜ?



「あー。シェフの屋島さんも時々、フロアに出てるから」

「だから、どうして!?」

「ゆっくり、時間をかけて、屋島さんと心を通わせてください」

「……意味わかんない」

「遅番たちの平和な時間を守ると思って、お願いします」



 そう言われたら引き下がるしかないじゃない。
 陽希くん困った顔してるし、頭を下げてるし、無理やり挨拶に行ってはぴねすを乱すことはしたくない。



「……わかった」



 わたしは仕方なく話題を変えることにした。
 まだ時間ではないらしく、カバンに入っていたジャムパンを頬張る陽希くん。

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