カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
「陽希くんさ」
「はい?」
唇にジャムが付いている。可愛らしいというか、セクシーというか、無自覚だとは思うけどやっぱり女子に人気ありそう。
「今日、はぴねすに来ていた学生がいたんだけど。テスト期間なんじゃないの?」
今日、テストのことを話しながら雑貨を見る女子生徒がいた。
陽希くんが今着ている制服と同じだったから、もしかしたらと思った。もしそうなら、バイトしている場合ではない。
陽希くんはペットボトルのお茶を飲み干してから頷く。
「今テスト期間です」
「え? 大丈夫なの? 勉強は!?」
「平気です。授業で全部覚えるんで。宿題以外は家で勉強したことないですよ?」
天才は本当に存在するんだ。
目の前でにこにこ笑う陽希くんを見ていたら、学生の時の苦労を思い出して少し腹立たしい。いや、羨ましい。
「テスト平気なんだ」
「前回、実力テストみたいなので一位取られちゃったんで、テスト前に教科書はざっと見ようかと……」
「なんか、もったいない」
「よく言われます」