カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
勝手に照れている。その天才的能力、もっと活用しないでどうするの。なんか、こんなところにいていいの? 逆に心配になる。
あ。別にはぴねすが悪いわけじゃないけど、とにかくもったいない。
「陽希くん」
「何ですか?」
そろそろ帰ろうかと立ち上がりかけて、ふと気になる。
「何で、はぴねすで働こうと思ったの?」
陽希は高校生だ。アルバイトをするよりも部活をする方が、友達もいて充実した青春の日々が過ごせるような気がした。
「ぼく、やる気ないんすよ」
「……はい?」
どこか遠くを見るような目をしながら陽希は話し始めた。
約二ヶ月前。高校に入学後、同時にアルバイトも決めた。
「実は親に言われて。部活もやらないんなら、アルバイトでもして社会勉強しろって」
「塾とかで勉強しろが普通だけどね」
「親は知ってました。ぼくがやる気ないこと。本気を出したことないんですよ。勉強しなくても成績よかったし」
努力しなくても出来てしまうのは羨ましい。反面、本気を出すことがないのか。なるほど。