カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
「いつも話し相手してくれてありがとうね。忙しいのに」
「大丈夫です。僕でよければいつでも」
瞬くんが話しているのは女性。
セミロングの黒髪はウェーブがかっている。ロングスカートにジャケットを合わせていて、しっかり者の印象。
可愛らしいけれど、キリッとしているというのか出来る女って雰囲気だ。
「前は随分と疲れていたみたいですけど、今日は大丈夫そうですね」
「そうなの! もうストレスのピークが終わった感じで」
違う、と思ったのはただの勘。
スタッフとはそれなりにコミュニケーションをとる。当たり前に。
わたしと初めて会った時には、客だから一定の距離を置いて話をしていた。それも普通のこと。
でも今話している彼女とは、何か違う気がする。何気に近い気がする。
もしかしたら、好き? だとしたら、瞬くんにも興味あるものが出来たってこと?
これは応援しなきゃ!
「すみません!」
「はい!!」
しかし今日は土曜日。カップルで賑わう雑貨コーナーは、アクセサリーを買いたい人達で溢れていた。
応援どころじゃない。仕事しなきゃ。