カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
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さすが土曜日。いつもと違うと思ったのは、店内のどこも混んでいて手が回らなくなってきたから。
私は初めて残業することを申し出た。
なぜなら、瞬くんはフロアにかかりきり。夏彦さんも厨房とフロアを行ったり来たり。そして早めに出勤したらしい女性スタッフ。まだ挨拶しか交わしてないけど、鶴羽《つるわ》櫻子《さくらこ》さんという名前の彼女もレジから動けない様子。
たくさん話したいけど、また今度になりそうだ。
店内が落ち着いてきたのは午後四時。でもまたディナータイムで混んでくるんだろうなと思っていたら、二階の雑貨コーナーに夏彦さんが来た。
「麗ちゃん、今日はありがとう。遅番もそろそろ来るからもうあがって」
「はい! わかりました。夏彦さんは?」
「まだ落ち着かなそうだから。少し残業していく」