カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


 そして。



「屋島さん!!」



 厨房のドアを叩きまくる。
 裏のドアからは当然、屋島さんは見えない。
 でもフロア側からも上手く隠れていて、腕の部分しか見えないんだよね。


 料理を受け取る窓はやけに小さい。多分、あれは屋島さんのために作られたんだろうな。



「何度も言いますけど、わたし高瀬麗です。仕事終わりの挨拶に来ました!」



 そしてまた舌打ちが聞こえる。聞いてはいるのに、こいつは毎回めんどくさいな。こいつ呼ばわりしちゃったけど、作るご飯は美味しい。



「先にあがりますね。お疲れ様です!」



 反応なし。わかってるけど、反応なし。
 ここで挨拶すると、どっと一日の疲れがくるんだよね。やっぱり顔を見せてもらえない不満が溢れてくるわけで。



「あ。麗さん、お疲れ様です」

「陽希くん!」



 癒しの彼が出勤してきた。おかげで今あった怒りが浄化されていくみたい。

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