カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


 事務所に入っていく陽希くんの後をついていく。そこにあった時計を見ると四時を過ぎたところ。



「陽希くん、出勤早いね」

「早く来ちゃいました。あんまり混んでたら早めに出ちゃおうかと思ったんですけど、今は大丈夫そうですね」



 確かいつもは五時か六時出勤だった。


 話に聞いた陽希くんはやる気も責任感もなかったらしいけれど、今の陽希くんはすごい。
 混むことを予想して来るなんて、ここまで一人の人間を変えるなんてさすが夏彦さん。



「陽希くんさ」

「愛の告白ですか!」

「……違うし」

「なんだ」



 がっかりしている。どういう反応をすればよいのかわからなくなる。



「知ってる? 瞬くんと親しげに話していたお客さんがいたんだけど」

「うーん。瞬さん、割とお客さんと話してますよ。特別な人とかいないと思います」

「勘が外れたか」

「まあ、お客さんの方はわからないですけど」

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