カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


 ぱくりとクッキーをつまむ陽希くん。
 何とも可愛らしい顔をして喜んでいる。キラキラと輝かせる瞳。張りのある頬。


 羨ましい。そんなことを思うと、自分でおばさんと言っているようなもの。だけど思わずにはいられない。


 わたしはほとんどノーメイクと言っていいほどのナチュラルメイク。理由は食に携わる仕事をしていることと、思い切り食べられないから。


 口紅やファンデーションを気にして食事を楽しめないなんて、わたしにとっては拷問に等しい。
 しかし二十八歳。肌が気にならないと言ったら嘘になる。



「麗さん」



 クッキーを平らげ、ペットボトルのストレートティーを飲んでから陽希くんが口を開いた。



「麗さんって、好きな人いるんすか?」

「え、え!?」



 あまりにも唐突な言葉に、頬杖ついていた腕が外れて転びそうになった。



「い、いきなり何言ってんの!?」

「麗さんって年上好きなんすか? そうするとぼくはもちろん論外っすね。瞬さんは二十八だし、舞斗さんも二十歳で駄目っすね」

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