カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
そんなやり取りがあってから、それまで毎日作っていた朝食に加えて、先に帰る日には夕飯を作ることになった。
冷蔵庫に貼られた夏彦さんのリクエストメモはいつも達筆。捨てるのがもったいなくて、何となくファイルしてしまうわたし。
茹でたウィンナーをザルにあげて、テーブルにドレッシング類を置いたところで夏彦さんが部屋から出てきた。
「おはようございます」
「……おはよう」
こうやって朝食を一緒にとるようになって気づいたのが、夏彦さんは朝に弱いということ。
三十八歳という年齢。そろそろ四十だし、新聞を読みながら珈琲を飲みそうなイメージがあった。何となくだけど。
でも毎朝、乱れた髪を直すこともしないで半分閉じられたままの目を擦りながら洗面所に向かう。まるで子供みたい。
その間にテーブルに食器を並べて、珈琲を入れて完璧な状態にする。
顔を洗うなどして戻ってきた夏彦さんは、やっぱり乱れた髪をしていたけどそのまま椅子に座った。