カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


「デートしよう」

「……は……え!?」



 一人考え込んでいたら、夏彦さんがまさかの言葉。


 聞き間違いかと思って見つめたら、夏彦さんは真剣な目をしていた。



「俺の誕生日。休み取れなかったら、八月のどこかの月曜日。月曜日なら定休日だから」

「……いや、でも」

「誕生日、祝ってくれないの?」



 反則だ。眠くてうるっとした瞳で見つめながら、そんな風に言われたら断れない。


 しかも眠い時の夏彦さんは強引。最近知ったことだけど、その意外性にドキドキしてしまう。


 絶対、断れないのをわかってて言ってるんだ。



「お祝いします」

「よかった」



 夏彦さんは安心したように言ってから、パンを口に入れた。本当に嬉しそうにしているから、嫌だなんて絶対に言えない。


 嫌じゃ、ないけど。
 デートはしたいと、思う……。


 朝から暑い。すごく、暑い……。

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