カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
先生と二人っきりは無理があったかもね。
賑やかな客人たちは全員フルーツタルトのケーキセットの注文。
同じもので助かった。まだ注文を聞く仕事には不安があって、実は陽希くんどころじゃない。
「お願いします!」
厨房の小窓に注文票を置くと、スっと出てきた手が奪い取るように回収する。
そろそろ、スタッフとして挨拶を交わしたいところだけど、無理やり突入するのだけはやめてくれと念を押されている。主に陽希くんと瞬くんから。
「顔を見せないことに、慣れたと言ったら慣れたかな」
呟いていたら、そこから人数分のケーキが出てきてわたしは慌てる。
大きめのお皿に切り分けたフルーツタルト。皿のまわりに生クリームとジャムが交互にあって可愛らしい。
「考えごとはダメ、仕事しなきゃ」
こうして賑やかな客人達は、午後四時まで店内で騒いでいた。