カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


「あ! 洗ってきたエプロン、チャリに置いてきた!」

「……やっぱり疲れてる? 大丈夫? というか、自転車で通ってるの?」

「大丈夫! はぴねす、駐車場狭いから」

「うん、確かにね」

「じゃ、ちょっと取ってくる!」



 夏彦さんと櫻子さんがすでにフロアにいるから、わたしはそのまま上がりになったんだけど。



「本当に帰って大丈夫かな」



 瞬くんの様子がいつもと違うから不安になる。


 引越しのアルバイトって、結構大変だったんじゃないかな。



「麗さん!」



 笑顔で事務所に入ってきたのは陽希くん。
 彼もこれから出勤だ。さっき会ったばかりで何か変な感じ。



「お昼ぶり。あれからデート出来た?」

「聞かないでください」

「先生のほうが一枚上手ね。理解してあげたら? 生徒と休みの日に二人っきりはやっぱりマズいでしょ」



 そう言うと悲しみの表情になる。と思ったら不貞腐れるように椅子に座る。


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