カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
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忙しく過ごしているうちに、研修期間が終わっていた。
七月中旬。暑さが本格的になってきた頃、陽希くんの出勤数が極端に減った。
理由はわかっている。この間の失恋だ。
それもタイミングが悪かった。あんなふうに瞬くんに告白する場面を見てしまったのだから。
しかも、後で聞いた話だけれど。若菜先生は親身になって、やる気のない陽希くんを見てくれていたらしい。相談に乗り、どうしたら夢中になれるかを一番に考えてくれた人。
だから、好きになったんだろう。
「誰も報われない恋だった。そんなの、寂しすぎる」
あの後、若菜先生がいなくなってから二人はケンカをした。
興味がない。仕事以外の付き合いをするつもりがない。
そう言って若菜先生を振った瞬くんが許せなかった。告白出来なかったと嘆いていた陽希くんだ。告白がどれほどの勇気が必要なのか知っている。
だからこそ怒ったんだ。
でも無理だ。瞬くんは興味がない。恋愛なんてとてもじゃないけど、無理だ。
やる気がない陽希くん。
興味がない瞬くん。
どこか似た二人が和解すること。今は難しいかもしれない……。