カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
優秀なシェフは変わり者
◇
働き始めて一ヶ月弱。
楽しいこともあったけれど、やはりスタッフが仲良くないというのは悲しい。働くなら、やっぱり楽しい場所がいい。贅沢は言えないけれど。
夏休み間近で、はぴねすとしては人手が欲しい時。
陽希くんのシフトも頼りにしていた部分もあった。ここ最近の休みは予想外といったところ。
という夏彦さんの嘆きを櫻子さんから聞いていた。
「長風呂しすぎたかな……」
わたしは慌てて湯船から出る。夏彦さんを待たせるわけにはいかない。
適当に身体を拭いて、パジャマ代わりに着ているスウェットに袖を通す。髪の毛は濡れたままだけど、今日は乾かす気になれなかった。
「夏彦さん、お風呂――!!」
わたしは一歩、バスルームから足を出して固まった。
来客中で玄関に人がいた。
その人はかなり驚いた顔をしていて、きっとわたしも同じ表情をしているに違いない。