カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

 急に夏彦さんと三人で顔を合わせた今さっきのことを思い出す。多分、顔が赤くなっただろうけど気にしない。



「えっと、あの。さっきのことなんですけど……」



 そもそもあんな状況を見られて、違うと言って信じてもらえるのか。



「まさか店長の部屋にいるなんてね」



 屋島さんは爽やかに笑う。



「だ、だから。夏彦さんの部屋にいたのは……」

「へえ。なるほどね」



 屋島さんは眼鏡を押し上げながら、急に納得し始めた。
 ちょっと、勝手に納得しないでよ。訳が分からない。わかるように納得してくれる?



「何がどういうこと?」

「いやいや。こっちの話」



 説明しようと口を開けると、屋島さんがゆっくり近づいてくる。
 夏彦さんよりも高い身長の彼が、目の前で腰を屈めた。さすがに異性がこれだけ近くに来ると、緊張して顔も赤くなる。



 わたしは俯き気味に、
「何ですか?」
 と距離を取ろうと後退る。


 けれど、その分長い足で近づいてきた。
 恋人でもないんだから、あまり近づかないで欲しい。

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