カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

強制的な約束



 ◇


 約束の日は月曜日ではぴねすは定休日だった。


 強制的な屋島樹との約束。遅刻なんてしたら、何を言われるかわからない。


 どんな服を着ていけばよいのか迷い、ジーパンに白いポロシャツ、薄い上着を羽織っただけのラフな格好。
 ショルダーバッグを引っ掛けて、時刻を確認する。



「えっと、五時……五分!?」



 デジタルな腕時計に見える五の数字。
 気に入って買った時計だが、スーツには合わなくて私服にしか合わせたことがない。なんてどうでもいい。

 遅刻!!



「やばい!」



 慌てて部屋を飛び出してエレベーターに乗る。
 事故を防ぐためなのか、のんびりと扉が閉まる。動き出すまでにも時間がかかる。



「遅いって!」



 やっと一階に着いてからマンションから走って出る。


 と、

「遅い!!」

 エレベーターに叫んだ言葉と同じことを屋島さんに言われた。


 しかも口調が厳しすぎて、思わず縮こまってしまう。
 か、噛み付かれるかと思った。
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