カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

「わ、わ!」



 何とか台車に乗せられたが、危うく落とすところだった。



「何でこんなに重いの!」

「それはキャベツだ。傷めるなよ」



 わたしよりキャベツの心配ですか。わかってます。期待はしてませんでした。


 でも、ショックなのはショック。


 仕事だと言って車に乗り込んだ理由はわかった。が、なぜ自分だけが力仕事をしているのだろう。


 確かに、仕入れに関しては素人。交渉など出来ないし、値段の感覚や旬のものも、よくわからない。
 そこは屋島さんに任せるしかない。そうなると、手の空いているわたしが運ぶのが一番。


 というか活気ある市場でぼーっとしているのは悪い気がして、自ら運ぶと宣言はしたけど。
 だからと言って、本当に何もしない屋島さんには腹が立つ。


 これが最後だと信じて台車を押す。


 もう完璧に夏だ。朝早いというのに、ジリジリと肌を焼かれている。暑さで体力が急激になくなってきている。


 それでも車に何とか野菜を詰め込む。プルプルする腕と足を何とか動かしてドアを閉める。


 そこへタイミングよく屋島さんが涼しい顔でやってきた。

< 161 / 167 >

この作品をシェア

pagetop